JOURNAL / THREAD LIFT
糸リフトには
どんな種類がある?
素材・構造・本数から考える、
糸リフトの選び方
PDOとPCLは何が違う?
メッシュ型の糸って何?
何本入れれば、しっかり上がる?
BEFORE CHOOSING
糸リフトは、
糸の名前から選ばなくていい。
糸リフトについて調べていると、 「PDO」「PCL」「PLLA」など、 いろいろな名前が出てきます。
さらに、コグの形やメッシュ構造、 「片側何本入れるか」といった話まで出てくると、 どの糸が自分に合っているのか、 ますます分かりにくくなるかもしれません。
でも、糸リフトを考えるときに大切なのは、 「一番強い糸はどれか」ではありません。
何を、どの範囲で、
どう支えたいのか。
その目的と肌質によって、 選ぶ素材も、構造も、本数も変わります。
THREE FACTORS
糸リフトを考える、
3つのポイント
「糸の種類」という言葉には、 実はいくつかの違う話が混ざっています。
MATERIAL
素材
PDO、PCL、PLLAなど、 糸そのものをつくっている素材の違いです。
体内で分解・吸収されていくまでの期間・経過や、 糸の物性などに違いがあります。
STRUCTURE
構造
同じ素材の糸でも、 組織を捉えるコグ(棘)の形や配置、 糸そのものの構造は異なります。
コグで組織を捉えて支えるタイプもあれば、 メッシュ状の構造をもつ糸もあります。
NUMBER
本数
糸リフトは、1本の糸だけで 顔全体を引き上げる治療ではありません。
どの範囲を支えたいのかによって、 必要になる糸の本数も変わります。
AN CLINIC’S APPROACH
「どの糸がいい?」ではなく、
「どのような個性の方が、何を、どう支えたい?」から考える必要があります。
01 / MATERIAL
PDO・PCL・PLLA。
素材によって何が違う?
糸リフトに使われる主な素材の違い
| 素材 | PDO | PCL | PLLA |
|---|---|---|---|
| 正式名称 | ポリジオキサノン | ポリカプロラクトン | ポリ-L-乳酸 |
| 吸収の目安 | 約6〜12か月 | 約1〜1.5年 | 約1~1.5年 |
| 素材の特徴 |
吸収性縫合糸としても 長く使用されている |
分解が比較的ゆっくりで 柔軟性のある素材 |
乳酸をもとにした 生分解性ポリマー |
| 糸リフトでの特徴 |
広く使用されている スタンダードな素材 |
PDOより長期間 組織内に残存する |
比較的ゆっくり 分解されていく |
| 選ぶときのポイント |
※吸収までの期間には製品や糸の構造、報告によって幅があります。 上記は文献をもとにしたおおよその目安です。
現在の糸リフトでは、 体内で徐々に分解・吸収される糸が多く使われています。
代表的な素材が、 PDO(ポリジオキサノン)、 PCL(ポリカプロラクトン)、 PLLA(ポリ-L-乳酸)です。
どれも「溶ける糸」ですが、 分解されていく速さや、糸そのものの物性には違いがあります。
比較的早く吸収される、スタンダードな素材
PDO(ポリジオキサノン)は、 吸収性縫合糸としても長く使用されてきた素材で、安全性の高い糸です。 糸リフトでも初期から長く広く使用されています。
体内では加水分解によって徐々に分解され、 文献ではおおむね 6〜8か月程度で吸収されていく素材です。
ただし、糸が体内からなくなる時期と、 リフトアップ効果が続く期間は同じではありません。
PDOの特徴としては、炎症が比較的おこりやすい素材です。そのため一過的に腫れが強くおこる方が稀におられます。しかし、それは後々の引き締め効果を期待することができます。
PDOよりゆっくり分解される素材
PCL(ポリカプロラクトン)も、 生体内で分解されるポリマーのひとつです。
PDOより分解がゆっくりで、 文献では1〜1.5年程度かけて 吸収される素材として報告されています。
動物実験でも、 PDOよりPCLの方が長く組織内に残存し、 糸周囲の組織反応にも違いがみられています。
PCLは最も柔らかいので引き上げ力はやや劣りますが、なじみの良い糸です。
比較的ゆっくり分解される乳酸系ポリマー
PLLA(ポリ-L-乳酸)は、 乳酸をもとにした生分解性ポリマーです。
PDOと比較するとゆっくり分解される素材で、 糸リフトにも使用されています。
硬い素材で挿入後、しばらくは違和感を訴えられることもありますが、時間と共になじんでいきます。
余談ですが、乳酸ポリマーと言えば、私が大学受験生だった2000年頃、「入試に出るかもしれない新しいテーマ」として扱われた素材です。
当時は、生体分解能のある夢のような素材ができた、と思ったものです。
素材は、糸の性格を決めるひとつ。
でも、素材だけでは糸リフトは決まりません。
02 / STRUCTURE
同じPDOでも、糸の「構造」が違います。
「PDOの糸を使っています」と聞くと、 同じような糸を想像するかもしれません。
でも、PDOはあくまで素材の名前。 同じPDOでも、糸の太さやコグの形、 コグの配置、そして糸そのものの構造には違いがあります。
その違いによって、 組織をどう捉え、どう支えるのかも変わってきます。
BARBED / COG THREAD
コグ型の糸
コグで組織を捉えて、
必要な位置で支える。
糸の表面に「コグ」と呼ばれる突起がついた、 糸リフトで広く使われている構造です。
コグが軟部組織を捉えることで、 組織を移動させ、その位置を支えます。
コグの大きさや向き、配置の仕方などによっても、 糸の性格は変わります。
MESH TYPE THREAD
メッシュ構造をもつ糸
「引っ掛ける」だけではなく、
組織とのなじみ方も考える。
糸の周囲にメッシュ状の構造をもつタイプもあります。
メッシュ構造によって組織と接する面積が大きくなり、 単純にコグで組織を捉えることだけではなく、 糸の周囲に生じる組織反応も このタイプの特徴のひとつと考えています。
メッシュとは、細い糸でできた網状の構造です。
細い網が加わることで、糸全体として組織と接する表面積が増えます。
糸の表面積が大きいほど、線維芽細胞が働きやすくなり、コラーゲン産生が促されると考えられています。
その結果、糸の周囲に線維性組織が形成され、周囲組織との癒着が起こりやすくなります。
この「癒着」は、糸リフトにおいて、単に引き上げるだけでなく、引き上げた位置を維持するという点で重要な役割を果たします。
当院では、強く引っ張ることだけを目的にするのではなく、 頬の軟部組織を輪郭に沿わせ、 支えたい場合などに糸の構造を使い分けています。
COG
組織を捉えて支える
MESH
組織とのなじみも利用する
AN CLINIC’S APPROACH
素材が同じでも、構造が違えば、糸の役割も変わります。
03 / NUMBER
糸リフトは、
何本必要?
糸リフトの診察でよく聞かれるのが、 「私は何本必要ですか?」という質問です。
4本、6本、8本。 本数だけを見ると、 「たくさん入れるほど、しっかり上がる」 ように思えるかもしれません。
でも当院では、 本数そのものから糸リフトを考えることはありません。
ONE THREAD / ONE AREA
ひとつの目安は、
「指1本分の範囲に、糸1本」
1本の糸が、顔の広い範囲を すべて均等に支えられるわけではありません。
当院では診察するとき、 「指1本分くらいの範囲を、糸1本が担当する」 というイメージを、ひとつの目安にしています。
たとえば、引き上げたい範囲が指2本分なのか、 3本分なのか、4本分なのか。
その範囲を見ることで、 必要な糸の本数もおおよそ見えてきます。
まず、引き上げたい範囲を見る
口横だけなのか、頬までなのか、 フェイスライン全体なのかを確認します。
その範囲を、複数の糸で分担する
1本の糸に広い範囲を任せるのではなく、 必要な範囲をそれぞれの糸で支えます。
そこから必要な本数を考える
そのため、同じ「たるみ」が気になる方でも、 必要な本数は一人ひとり異なります。
LIFT & SUPPORT
1本を強く引けば、もっと上がる?
糸を強く牽引すれば、 施術直後には大きく引き上がって見えることがあります。
しかし、顔の軟部組織には重さがあり、 日常的に表情も動かします。
そのため当院では、 1本の糸に大きな負担をかけて 強く引き上げることよりも、 必要な範囲に糸を配置し、 輪郭に沿って組織を支える ことを大切にしています。
だからこそ、糸の素材や構造だけでなく、 どこから、どの方向へ、どの範囲を支えるのか という設計が重要になります。
強く引くより 必要な範囲を、必要な本数で支える。
04 / DESIGN
結局、どの糸を選べばいい?
ここまで、糸の「素材」「構造」「本数」について お話ししてきました。
では結局、 PDOとPCLのどちらがいいのか。 コグ型とメッシュ型のどちらがいいのか。 何本入れればいいのか。
実際には、この3つを別々に決めるのではありません。
WHAT WE LOOK AT
診察がすべて。
どこが下がっているのか
頬なのか、口横なのか、 フェイスラインなのか。 まず、動かしたい組織を確認します。
どのくらいの範囲なのか
狭い範囲を支えればよいのか、 頬からフェイスラインまで 広く支える必要があるのかを見ます。
組織の厚みや動き方はどうか
同じ「たるみ」でも、 皮下組織の厚みや柔らかさ、 動きやすさは一人ひとり異なります。
どの方向へ移動させるのか
ただ上方向へ引っ張るのではなく、 どの方向へ動かすと 自然な輪郭になるのかを考えます。
そこまで考えて、はじめて
素材 × 構造 × 本数 × 配置
を決めていきます。
FOR EXAMPLE
同じ「フェイスラインが気になる」でも、
同じ糸リフトにはなりません。
口横の小さなもたつきだけを整えたい方と、 頬全体の組織が下がって フェイスラインまで重くなっている方では、 支えるべき範囲が違います。
組織が薄い方と、 ボリュームのある方でも、 糸に求める役割は変わります。
だから、同じ年齢、同じ悩みであっても、 必要な糸の種類や本数が 同じになるとは限りません。
05 / OUR CHOICE
当院がPDOだけを使用する理由。
PDO、PCL、PLLA。 糸リフトには、吸収されるまでの期間が異なる いくつかの素材があります。
その中で当院では、 現在、PDO製の糸のみを採用しています。
理由は、 「長く残る糸ほど、リフトアップ効果も長く続く」 とは考えていないからです。
OUR PHILOSOPHY
糸が残っている期間と引き上げを維持できる期間は、同じではない。
「長く溶けないこと」を最優先にはしていません。
糸リフトの効果は、 体内に糸が存在しているだけで生まれるものではありません。
コグが組織を捉える力、糸の配置、 周囲に形成される線維性組織、 そして施術後の組織の変化など、 複数の要素が関係します。
そのため当院では、 「吸収されるまでの期間が長い」という理由だけで、 糸を選ぶことはありません。
役割を終えた異物を、必要以上に長く残さない。
糸は吸収性であっても、 吸収されるまでは体内に存在する異物です。
もし感染などのトラブルが起きた場合には、 体内に残っている糸そのものへの対応が 必要になることがあります。
当院では、 十分な役割を果たしたあとまで 糸が長期間残り続けることに、 大きなメリットを感じていません。
必要な期間は組織を支え、 その後は徐々に吸収されていく。 そのバランスを考え、 当院ではPDOを選択しています。
長く残る糸を選ぶのではなく、 必要な仕事をして、必要以上に残らない糸を選ぶ。
06 / TREATMENT SELECTION
たるみの最適解は糸リフトとは限らない。
「たるみが気になるから、糸リフト」
そう考える方も多いのですが、 たるみの原因や程度によっては、 糸で強く引き上げることが 最適とは限りません。
大切なのは、 何が下がっているのか。 そして、何を変えたいのか。
MOVE
組織を移動させたい
糸リフト
頬や口横など、下がった軟部組織を ある程度まとまった範囲で移動させ、 輪郭を整えたい場合。
糸で組織を捉え、 必要な方向へ移動させて支える 糸リフトが選択肢になります。
SUPPORT
細かく支えたい
ショートスレッド
柔らかい肌質に起こりやすい細かなゆるみや輪郭を整えたい場合。
短い糸を複数配置し、 組織にコラーゲンを増やし細かく支える働きがあります。
TIGHTEN
皮膚・皮下組織を引き締めたい
Morpheus8
組織を大きく移動させるというより、 皮膚のゆるみや、 フェイスラインのもたつきを 引き締めたい場合。
針の深さとRFの熱を調整しながら 組織にアプローチするMorpheus8を 検討することがあります。
動かす 糸リフト
支える ショートスレッド
引き締める Morpheus8
COMBINATION
短期ではなく長期的に最適な治療をプランニング
実際の顔では、 「頬は下がっているけれど、 フェイスラインには皮膚のゆるみもある」 というように、 複数の変化が同時に起きていることがあります。
その場合には、 ひとつの治療ですべてを解決しようとするより、 それぞれの治療に、 得意な仕事をさせる。
当院では、そのように たるみ治療を組み立てています。
「必要な治療を必要な順番で」が最も大切
FAQ
糸リフトについて、
よくある質問。
Q. PDO・PCL・PLLAは、どれが一番いいですか?
素材だけで、糸リフトの良し悪しを 決めることはできません。
PDO・PCL・PLLAでは吸収されるまでの期間などに違いがありますが、 実際のリフト効果には、糸の構造や太さ、 コグの形、挿入する層、方向、本数など 複数の要素が関係します。
当院では、それらを総合して考えたうえで、 現在はPDO製の糸のみを使用しています。
Q. 長く溶けない糸ほど、効果も長く続きますか?
糸が体内に残っている期間と、 リフト効果が続く期間は同じではありません。
糸リフトの効果は、 糸が存在していることだけで決まるものではありません。 組織を捉える力や配置、 糸の周囲に生じる組織反応なども関係します。
そのため当院では、 「長く残ること」だけを理由に 糸を選ぶことはありません。
Q. 糸リフトは何本入れれば上がりますか?
必要な本数は、 「どの範囲を支えたいか」によって変わります。
当院では診察時、 「指1本分程度の範囲を、糸1本が担当する」 というイメージを、 本数を考えるひとつの目安にしています。
実際にはたるみの範囲や組織の状態、 使用する糸、配置などを見て設計します。
Q. 少ない本数でも、強く引けば上がりますか?
強く引くことと、 その位置をきれいに維持することは別です。
強く牽引すれば施術直後の移動量を 大きく見せることはできますが、 当院では1本の糸に広い範囲を任せるより、 必要な範囲に糸を配置して 組織を支えることを重視しています。
Q. メッシュ型の糸は、普通の糸と何が違いますか?
メッシュ構造によって、 組織と接する表面積が大きくなることが特徴です。
糸の周囲では線維芽細胞の活動や コラーゲン形成などの組織反応が起こります。 表面積や糸の構造は、 こうした反応に影響する要素のひとつです。
当院では、コグで組織を捉えることだけでなく、 周囲組織とのなじみや支え方も考えて 糸の構造を使い分けています。
Q. 糸が溶けたら、元に戻りますか?
糸リフトの働きは、引き上げることと組織の癒着です。引き上げは徐々に緩んできますが、組織の癒着が同時に起こっているので、完全に元に戻るとは言えないと考えます。
ただし、糸リフトを入れて一連の経過を見るのに半年はかかりますから、その間にも日々エイジングは続くので、仮に糸リフト施術前と全く同じ状態に戻ったとしても、半年分のエイジングは防げたこととなります。
吸収性の糸は徐々に分解されていきます。 また、その過程では糸の周囲にも コラーゲン形成などの組織反応が起こります。
Q. 糸リフトは何度も受けても大丈夫ですか?
繰り返し治療が検討されることはありますが、 毎回同じ場所に糸を追加すればよいわけではありません。
過去に使用した糸の種類や本数、 施術した時期、現在の組織の状態などを確認したうえで、 追加治療が適しているかを判断します。
当院がPDOを選択している理由のひとつにも、 必要以上に長期間、異物を残さないという考えがあります。
Q. 糸リフトとMorpheus8は、どちらがいいですか?
「何を変えたいか」によって選択が変わります。
下がった軟部組織を移動させて支えることが目的なら 糸リフトが選択肢になります。 一方、皮膚や皮下組織のゆるみを引き締めたい場合には、 Morpheus8を検討することがあります。
両方の変化がある場合には、 それぞれの役割を分けて 組み合わせることもあります。
SUMMARY
糸リフト選びで、
大切なこと。
糸リフトには、 PDO・PCL・PLLAなどの素材の違いがあります。
同じ素材でも、 コグの形やメッシュなどの構造の違いがあり、 さらに、どの範囲を支えるのかによって 必要な本数も変わります。
だから、 「PCLの方が長く残るから」 「強い糸だから」 「たくさん入れるから」 というひとつの要素だけで、 糸リフトを選ぶことはできません。
01 素材だけで選ばない。
02 強く引くことだけを目的にしない。
03 本数ではなく、支える範囲から考える。
04 引き上げたあと、どう支えるかまで考える。
AN CLINIC’S APPROACH
大切なのは、
「どの糸を入れるか」よりも、
「その糸に、何をさせるか」。
どこを動かし、どの範囲を支え
どの位置に維持したいのか。
糸を選ぶのではなく設計を選ぶ。
CONSULTATION
私の場合は、
どうしたらいい?
糸リフトがいいのか。
何本くらい必要なのか。
それとも、別の治療が合っているのか。
治療を決めてから、 ご相談いただく必要はありません。


