ボトックスの失敗とは?

BOTOX / WHEN IT FEELS WRONG

ボトックスで
「失敗した」と感じやすい部位は?

MEDICAL REVIEW

AN CLINIC MOTOMACHI 院長

この記事の著者

AN CLINIC MOTOMACHI

  院長 荒井美香

an clinic(あんクリニック)院長
美容外科・美容皮膚科 / 麻酔科

  • 日本美容外科学会(JSAS)専門医
  • 麻酔科認定医・標榜医
  • 日本抗加齢医学会専門医

神戸元町・三宮にあるan clinic(あんクリニック)院長。
救急・麻酔科での診療経験を経て、美容医療に従事。 美容医療歴約7年。治療そのものだけでなく、 痛みや不安にも配慮した美容医療を大切にしています。

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ボトックスは、よく効けばよい治療とは限りません。

ボトックスは、筋肉の動きを弱めることで、 表情ジワや筋肉による輪郭の変化を改善する治療です。

一方で、私たちの顔の筋肉には、 シワを作る以外にもさまざまな役割があります。

そのため、部位や効かせ方によっては 「シワは減ったけれど、思っていた仕上がりと違う」 と感じることがあります。

01 / WHY IT HAPPENS

「失敗」に感じる状態とは?

患者様が「失敗」と感じるパターンには主に3つあります。

01

強く効きすぎて動きにくい

02

効きが弱く効果を感じない

03

左右差があって不自然・不快

ただし、筋肉の動きにはそれぞれ意味があります。

例えば額の前頭筋には眉を持ち上げる働きがあり、 口周りの筋肉は話す・飲む・笑うといった日常の動作にも関係しています。

効きすぎると動かしづらくしんどい思いをし、効きが弱いとせっかく施術したのに効果がない、と感じることでしょう。また、左右差があると見た目の不自然さもさることながら、ボトックスの効きが弱い方がより強く動くことがあり、見た目以上に不快感が生じることがあります。

THE KEY POINT

「効きの強さ」と「効かせる部位」がずれると「失敗」に繋がる

また、部位によってはボトックスの影響を繊細に感じてしまうことがあります。

では、実際にどの部位で「失敗した」と感じやすいのでしょうか。

01 / ABOUT BOTOX

ボトックスの作用と、
効果が薄くなっていく仕組み。

ボツリヌストキシンが神経終末からのアセチルコリン放出を抑え、筋肉の収縮を弱める作用機序

ボトックスは、神経から筋肉への刺激を弱めます。

筋肉は、神経終末から放出される アセチルコリンという神経伝達物質を受け取ることで収縮します。

ボツリヌストキシンは神経終末に作用し、 アセチルコリンの放出を抑えることで、 神経から筋肉へ伝わる刺激を弱めます。

01 神経から刺激

神経から筋肉へ、収縮するための刺激が伝わります。

02 放出を抑制

アセチルコリンの放出が抑えられます。

03 筋肉の収縮が弱くなる

筋肉への刺激が減り、収縮する力が弱くなります。

その結果、表情ジワを作る筋肉の動きや、 エラ・広頚筋など筋肉の収縮によって生じる変化を 和らげることができます。

効果が永久に続かない理由。

ボトックスによって、神経そのものが永久に失われるわけではありません。

時間の経過とともに神経筋接合部の働きが回復し、 神経から筋肉への情報伝達が再び行われるようになります。 それに伴って、抑えられていた筋肉の動きも少しずつ戻っていきます。

01
注射後

アセチルコリンの放出が抑えられ、 筋肉への刺激が弱くなります。

02
効果が持続

筋肉の収縮が弱い状態が続き、 表情ジワなどが目立ちにくくなります。

03
神経伝達が徐々に回復

時間とともに神経筋接合部の機能が回復し、 筋肉への刺激が戻り始めます。

04
効果が薄くなる

筋肉の動きが徐々に戻り、 ボトックスの効果も自然に弱くなっていきます。

THE KEY POINT

ボトックスは、筋肉を永久に動かなくする治療ではありません。

神経から筋肉への刺激を一時的に弱める治療なので、 時間の経過とともに作用は徐々に薄れていきます。

つまり、効きすぎた場合も多くは時間とともに作用が弱くなっていきます。 一方で、効果が続いている間は筋肉の動きが変化するため、 どの筋肉を、どの程度弱めるのかが重要です。

ここからは、特に「失敗した」と感じやすい部位について見ていきます。

02 / WHERE IT CAN FEEL WRONG

「失敗した」と感じやすいパーツ。

ボトックスは部位によって、求める効果も、 残しておきたい筋肉の動きも異なります。

01

FOREHEAD & EYES

額・目まわり

目の開きや表情に影響を及ぼすため少しの変化が気になる場所

額:前頭筋

額の前頭筋は、額の横ジワを作る一方で、 眉を持ち上げる働きもあります。

そのため効かせすぎると、 眉が下がる、まぶたが重く感じる、 二重幅が狭くなったように感じるなど、 目元の印象の変化とそれが行き過ぎると目のあけにくさを感じることがあります。

また、打つ位置に偏りがある場合、眉毛が吊り上がった(spock眉)ように見えることもあります。

目まわり

目尻や目の下のシワに関わる眼輪筋は、 笑ったときの目元の表情にも関わっています。

動きを弱めすぎると、 笑顔が以前と違って見える、 目元が不自然に感じるといった違和感につながることがあります。

目尻側のみに注入する場合は、影響は少ないですが、目頭に近づくほど表情に大きく影響したり、涙袋の消失、クマの悪化につながることがあります。

目の下にボトックスを注入するときは、目元の特徴を評価した上で注意深く注入する必要がある難しい部位です。

POINT

目元では「シワをどこまで消すか」だけでなく、 眉や目の動きをどこまで残すかが重要です。

02

AROUND THE MOUTH

人中・口角・あご

「口の動き・口元の左右差にも影響しやすい」

人中

人中短縮ボトックスでは、 上口唇周囲の筋肉の動きを弱めます。

効き方によっては、 口をすぼめにくくなるため飲みにくい、 笑いにくいなどの違和感につながることがあります。

口角

口角を下方向へ引く筋肉を弱めることで、 口角を下がりにくくする治療です。

口角下制筋という浅く薄い筋肉に注入します。左右の筋力差や近傍かつ深層の口唇下制筋にボトックスが効いてしまうと、 笑ったときの左右差が気になることや動きの違和感が出ることがあります。

あご

オトガイ筋の緊張を弱めることで、 いわゆる「梅干しジワ」を改善します。

強く効きすぎると、 下唇の動きにくさやあご周囲の動きに違和感を感じることがあります。

POINT

口周りは複数の筋肉が近接し、 日常生活でも頻繁に動かす場所です。 少量の違いでも変化を感じやすい部位といえます。

03

WIDE AREA TREATMENT

スキンボトックス・広頚筋ボトックス

肌の質感を変えたり、下へ引く筋肉を緩めるボトックスです。広く浅く効かせる治療のため、注入位置が深すぎると表情筋に影響を及ぼしてしまうことがあります。

スキンボトックス

スキンボトックスは、 通常のボトックスより浅い層へ少量ずつ広範囲に注入する治療です。

毛穴や皮脂、細かなシワなどへの効果を期待できますが、 範囲や量によっては表情が硬い、 笑いにくいと感じることがあります。

広頚筋ボトックス

広頚筋は首から下顔面に広く存在し、 フェイスラインを下方向へ引く力にも関わります。

一方で、たるみの原因が皮膚や脂肪、骨格にある場合には、 広頚筋を弱めても期待したリフトアップ効果が得られないことがあります。

POINT

広い範囲へ浅く作用させる治療では、 注入の深さがポイントになります。術者の手技の理解と慣れが不具合を避ける一番の方法です。

NOT TOO MUCH. NOT TOO LITTLE.

ボトックスは、効かせれば効かせるほど 良い治療ではありません。

むしろ、ボトックスが足りない場合は補うだけなので簡単ですが、多すぎた場合は左右差を釣り合わせるか、または効果が弱まるのをただただ待つのみとなってしまいます。

ですので、ボトックスは控えめに注入し、足りない場合に足すのが一番良いのです。

また、動きを完全に止めてしまうのではなく、筋肉の役割や周囲とのバランスを考えながら、 必要な動きを残すことも、 自然な仕上がりのためには重要です。

ボトックス治療のまとめイメージ

03 / TREATMENT DESIGN

失敗を減らすために大切なこと。

ボトックスは「何単位打つか」だけで、 仕上がりが決まる治療ではありません。

同じ部位に、同じ量のボトックスを使用しても、 全員が同じ仕上がりになるわけではありません。

筋肉の強さや広がり、左右差、 普段どの筋肉を使って表情を作っているかは、 一人ひとり異なるからです。

01

少なすぎれば十分な効果が出ず、 多すぎれば必要な動きまで弱くなることがあります。

02

位置

同じ筋肉でも、どこに注入するかによって 周囲の筋肉への影響は変わります。

03

深さ

注入する層も治療設計のひとつです。 対象となる筋肉や目的によって、適した深さは異なります。

04

範囲

一点だけではなく、 どの範囲まで作用させるかによっても 表情や輪郭の変化は異なります。

05

筋肉の使い方

眉を上げる癖、笑ったときの口元の動きなど、 普段の表情の作り方も確認して治療を考えます。

MORE IS NOT ALWAYS BETTER

「過ぎたるは及ばざるがごとし」。

やりすぎを戻すことはできません。 強く効きすぎて困るならば、弱めにして後から足す方が、快適な結果となります。

特に額や目まわり、口まわりのように、 表情に関わる複数の筋肉が影響し合う繊細な部位を強く止めてしまうと、効きすぎやアンバランスで 思わぬ違和感につながることがあります。

ボトックスはシンプルな注射に見えますが、 筋肉のバランスを見ながら、効かせ方を調整するとても繊細な治療 でもあります。

04 / FAQ

ボトックスについてよくある質問。

Q ボトックスを1回打ったら、ずっと効果が続いているという人がいますが?
A

ボツリヌストキシンによる神経筋接合部への作用そのものが、 永久に続いているわけではありません。

時間の経過とともに神経から筋肉への情報伝達は回復し、 筋肉の動きも徐々に戻っていきます。

一方で、治療によって一定期間筋肉の動きが弱くなることで、 それまであった動かす癖が抜けたり、 筋肉のボリュームが以前より小さくなったりすることがあります。 そのため、薬の作用が薄れたあとも 「以前よりシワが目立たない」 「まだ効果が残っているように感じる」 ということはあります。

薬そのものの作用が続いていることと、 治療によって生じた見た目の変化が残っていることは、 必ずしも同じではありません。

Q ボトックスが効きすぎた場合、元に戻すことはできますか?
A

ヒアルロン酸のように、注入した薬剤を溶かして すぐに元の状態へ戻す治療はありません。

多くの場合は、時間の経過とともに神経筋接合部の機能が回復し、 筋肉の動きも徐々に戻っていきます。

そのため、効きすぎを避けるには 最初の治療で必要以上に効かせないことが重要です。

Q ボトックスを打ったあとに左右差が出ることはありますか?
A

あります。 もともとの筋肉の強さや表情の作り方には、 左右差があることも少なくありません。

また、ボトックスの効き方にも個人差があるため、 治療後に左右差が目立って感じられることがあります。

状態によっては、十分に効果が現れたあとに診察し、 必要に応じて追加調整を検討します。

Q ボトックスは何回も続けると効かなくなりますか?
A

繰り返し治療しているからといって、 必ず効かなくなるわけではありません。

一方で、ボツリヌストキシンに対する中和抗体が形成され、 効果が弱くなる「二次無反応」が起こる可能性はあります。

必要以上に高用量を使用したり、 短い間隔で追加投与を繰り返したりすることは避け、 必要な量を適切な間隔で使用することが大切です。

また、ごくごくまれにボトックスが効かない体質の方がいるという報告もあります。学術論文での報告はおおよそ1%と言われています。

Q ボトックスは定期的に打ち続けた方がいいですか?
A

必ず決まった間隔で打ち続ける必要があるわけではありません。

効果の持続期間や、どの程度筋肉の動きが戻ると気になるのかは 人によって異なります。

「3か月経ったから打つ」と機械的に決めるのではなく、 筋肉の動きや気になる症状がどの程度戻っているかを見ながら、 次の治療時期を考えてよいでしょう。

Q ボトックスを注入後に妊娠がわかりました。どうなりますか?
A

妊娠中のボトックス治療は行いませんが、妊娠に気づかず治療を受けてしまった場合に、「ボトックスを打った=胎児に異常が起こる」と考える必要はありません。

妊娠中の使用が避けられている背景には、妊婦を対象とした十分な安全性試験がないことに加え、動物実験において高用量で胎児への影響が認められたことがあります。ただし、これらの動物実験の結果が、そのままヒトでのリスクを示すものではありません。

注射後に妊娠が判明した場合は、注射時期・製剤・使用量などを確認し、産婦人科の担当医にも伝えて相談してください。